色んな子がいますね その2
ある日私はジュリアの夫に何気なく聞いてみました。
「来年はもう日本に行かないの?」「たぶん」ただでさえ無口なAが、この時はもうそれ以上ないというほど無口だった。
しつこく食い下がる私を「まあ、暑いしさ日本は」とかわし、Aはビールのグラスを口につけて、もうそれ以上しゃべれないようにした(ように私にはみえた)。
Aにとっては恒例の里帰りでもある日本行き。
20数年前、大学紛争のさなかにあった日本を後にして以来、ずっとフランスに住み続け、フランス人の妻との間には中学生になる息子が一人。
「もう日本に帰ってもオレの居場所なんてないから」とつぶやくことはあったが、年老いた両親を訪ねたり、東京の下町を散策したり、愛用のコクヨのノートをまとめ買いしたり、と、楽しみにする要素は確かにたくさんあったはずの帰国です。
その恒例帰国の突然の「取り止め宣言」。
これは彼のせいじゃない。
ジュリアのせいだ、と私は直感した。